藍微塵とは縞柄の一種で、経と緯にそれぞれ二本ずつの藍染糸に濃淡の藍を用いたものです。藍微塵の着物は多くの文学作品に登場してきました。例えば、山東京伝『仕懸文庫』(1791年)、仮名垣魯文『安愚楽鍋』(1871-72年)などがあります。

特に印象的な登場をするのが、怪談物で有名な作家・田中貢太郎(1880-1941)が1927年に発表した『怪談青灯集』所収の短編「藍微塵の着物」です。 あらすじは次の通りです。東京芝区のある質屋で、奥さんが五、六歳の女の子を残して病死したので、その亭主は後妻をもらいました。

後妻は性格が明るく、いつもニコニコしており、子どもにも深い愛情を注ぎ、子どもも懐いたので、亭主は安心して過ごしてました。 そんなある日、後妻は急に暗くなり、口数も少なくなってしまいました。質屋の親戚の老人は亭主にかまってもらえないから、浮かない顔をしているものと思い、後妻に尋ねてみました。

後妻は意外にも、夜寝ていると、仏壇のある部屋につながる襖が開いて、女の人が出てきてお辞儀をするので、恐ろしくてゆっくり寝られもしないと言います。女が藍微塵の着物を着ているというので、老人は前妻ではないかと思い、亭主に伝えます。亭主も藍微塵は前妻の好きな着物であったと言い、後妻にもし今度現れたら自分を起こすように言います。 その翌晩、後妻が夜中に目を覚ますと、やはりいつものように襖が開いて、藍微塵の着物を来た女が現れます。

後妻はすぐに亭主を起こします。着物買取お辞儀する女を見て、亭主はお前は何の不満があっていつもやってくるんだと叱りつけるように言います。すると女は、お礼に来ていると言います。亭主は、「お前が来るとこいつが怖がるからもう来るな」と言うと、女は姿を消し、それ以降、再び現れることはありませんでした。 藍微塵という好きな着物で正体を察するというのは微笑ましいところですが、不満があるのではなく、お礼にやってくるという、律儀な幽霊もいるのですね。

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